筋力÷筋量で相対筋力を出しても体格の影響は残る
要点
筋力は筋のサイズだけで決まらず、レジスタンストレーニングの負荷様式によってサイズと筋力は異なる幅で変化する。この論文は筋力を筋量で割る比率補正と、サイズを共変量として固定する重回帰を、NHANES 1999~2002のデータおよび著者らの既存データに適用して比較した。結論は、比率補正には仮定を検証しなければ表に出てこない落とし穴があるということだ。筋力÷筋量という数字一つで体格差が消えるとは言えない。
体格の違う二人を比べるとき、よく使われるのが筋力を体重や筋量で割る方法だ。この論文はその割り算が見た目ほどきれいではないと述べる。比率補正には検証すべき仮定があり、それを飛ばすと補正後も体格の影響が残る。
なぜ筋力を筋量で割るのか?
目的は二つある。一つは帰属の判別だ。トレーニング後に筋力が伸びた理由が筋の肥大なのか、神経適応や筋内部の変化なのかを見るには、サイズを固定した状態で見る必要がある。もう一つは個人間の比較で、筋量の異なる二人を同じ土俵に乗せる試みである。
そうする理由もある。著者らが指摘するとおり、筋のサイズと筋力は関連しているが負荷様式によって異なる幅で変化する。同じ8週間でも筋はわずかに大きくなり、筋力は大きく伸びるということが普通に起きる。
比率補正の仮定とは何か?
筋力を筋量で割った値を比べるということは、筋力がサイズに正比例し、その関係線が原点を通ると前提することに等しい。実データがその前提を満たさなければ、割った後も値は体格に沿って系統的に傾く。補正したつもりで補正できていない状態だ。
著者らはNHANES 1999~2002のデータと自分たちの既存研究のデータに、比率補正と重回帰をそれぞれ適用してこの違いを示す。重回帰はサイズを割るのではなく共変量として固定するため、関係線が原点を通らなくても成立する。
この論文は新しいトレーニング効果を報告した実験ではなく、分析手法を扱った文章である。どのプログラムが優れているという結論はここからは出ない。ただし相対筋力の数字を読むとき、その数字がどう作られたかを確認する根拠にはなる。
マッスルインデックスはどう避けているか
マッスルインデックスはビッグ3合計を体重で割らない。代わりに実際のリフター分布に合わせて作られたDOTSの4次多項式係数を掛ける。60kgのリフターと100kgのリフターの関係が直線でも原点通過でもないことが、すでに係数の中に織り込まれているということだ。単純に割るだけでは軽量級が有利になる歪みが生じる。
同じ問題の数字は筋肥大と筋力の相関r=0.92は膨らんでいると筋力は79.5%伸びたのに大きくなった筋は一つだけだったで確認できる。基準線そのものの引き方は筋力基準は実際の分布から出すべきだにまとめてある。
よくある質問
筋力を体重や筋量で割れば公平な比較になるか?
それだけでは足りない。割り算は筋力がサイズに正比例し関係線が原点を通ると仮定しているため、実データがそうでない場合、補正後も体格に沿った傾きが残る。
比率補正の代わりに何を使うのか?
重回帰だ。筋のサイズを割るのではなく共変量としてモデルに入れて固定するため、筋力とサイズの関係が原点を通らなくても成立する。
なぜ筋のサイズを固定して筋力を見るのか?
筋力が伸びた理由を判別するためだ。筋が大きくなったからか、神経適応や筋内部の変化によるものかは、サイズを一定に保った状態でのみ切り分けられる。
筋のサイズと筋力は常に一緒に伸びるか?
いいえ。両者は関連しているが、レジスタンストレーニングの負荷様式によって異なる幅で変化し、筋はわずかに大きくなり筋力は大きく伸びるという例が多い。
マッスルインデックスは体重をどう補正しているか?
ビッグ3合計を体重で割る代わりにDOTSの4次多項式係数を掛ける。体重と筋力の関係が直線でないことが係数自体に反映されており、単純な割り算で生じる軽量級バイアスを避けられる。
出典: PubMed