研究

10週間で筋力は79.5%伸び、大きくなった筋は一つだった

要点

ラットを10週間のはしご登りで抵抗トレーニングさせた実験で、訓練群が担いだ相対最大負荷は79.5%増加した(p = 0.0007)。ところが相対筋量が有意に増えた筋は長母趾屈筋(FHL)だけで(p = 0.002)、同時に測定したヒラメ筋は変化せず、遺伝子発現は訓練群と対照群のあいだに差がなかった(p > 0.05)。同じプログラムを同じ期間回しても、筋力の伸びと筋の大きくなり方は同じ速度では動かず、反応する筋も分かれる

まず数字から。10週間後、訓練群が担いで登れる相対最大負荷は79.5%増えた。筋力がほぼ倍になったということだ。同じ動物の筋を取り出して重さを測ると、有意に大きくなっていたのは長母趾屈筋(FHL)一つだった。ヒラメ筋はそのままだった。

この論文の本来の目的は筋肥大の研究ではない。齧歯類の抵抗トレーニングモデルを新しく作ることが目的だった。従来の方式はラットの尾に錘を吊るすもので、尾は血流が通る部位だから負荷をかけると循環に干渉が生じる。研究陣は滑車に荷重ベストを組み合わせ、尾に触れずに漸進的過負荷をかける装置を作った。その装置が実際に働くかを確かめるために回した10週間のプロトコルが、上の結果である。

実験はどう設計されたか

対象は自然発症高血圧ラット(SHR)で、対照群4匹抵抗トレーニング群6匹に分けられた。トレーニングは10週間のはしご登り — ベストに負荷をかけてはしごを登らせ、重量を漸進的に上げていく方式だ。10週間後に機能的指標と形態学的指標を測り、筋はヒラメ筋長母趾屈筋(FHL)の二つを見た。

筋力と筋量が別々に動いた

  • 相対最大負荷 — 79.5%増加(p = 0.0007)。このプロトコルが実際に筋力を上げたということで、モデル検証の中心的な結果だ。
  • 長母趾屈筋(FHL)の相対重量 — 有意に増加(p = 0.002)。大きくなった筋はここ一つ。
  • ヒラメ筋 — 有意な変化なし。同じ動物、同じ10週間である。
  • 遺伝子発現 — 訓練群と対照群のあいだに有意差なし(p > 0.05)。

なぜ一つの筋だけが大きくなったのか

二つの筋の役割が違う。ヒラメ筋は立位姿勢を保つ遅筋優位の筋で、一日中低い強度で働いている。長母趾屈筋は足趾を曲げて蹴り出す、相対的に速筋の比率が高い筋だ。はしご登りは重い負荷を短く反復する形のトレーニングであり、その刺激に先に反応するのは速筋優位の筋である。すでに姿勢保持で刺激が飽和している筋には、同じプロトコルが新しい信号にならなかったという解釈が自然だ。

そして79.5%という数字は、筋が大きくなった分だけでは説明できない。筋力増加のかなりの部分は動作の学習と神経系の変化だ。ヒトでも初期は記録が先に伸び、体が後から追いつく — スクワットでその順序が実際にどう現れるかはスクワットの筋力はフォームが変わる前に伸びるにまとめてある。

遺伝子発現に差が出なかったのは何を意味するか

「トレーニングが遺伝子に触れない」という意味ではない。測定時点の問題だ。トレーニング刺激に対する遺伝子発現の反応は運動直後の数時間から数日のあいだに大きく動き、その後落ち着く。10週間のプログラムが終わってから一度測れば、すでに新しい定常状態を見ていることになる。しかも各群は4匹と6匹だ。この規模では、よほど大きな差でなければ統計的に捉えられない。

記録する側に残るもの

この実験はラットが対象だが、記録を残す立場から持ち帰れるものが一つある。筋力の指標と筋量の指標を別々に残すことだ。ここでは筋力が79.5%上がるあいだに、二つの筋のうち一つだけが大きくなった。ビッグ3の重量が伸びているのに見た目が変わらないとき、プログラムが失敗したと結論づけたくなるが、二つの指標がもともと違う速度で動くことは複数のモデルで繰り返し出てくる結果だ。筋の大きさと筋力の相関が実際どの程度かは筋の大きさと筋力の相関で扱った。

実務的には三つを分けて記録するほうがいい — 重量(1RMまたは推定1RM)体重、そして周径や写真である。マッスルインデックス計算機は前の二つで計算されるため、筋力が先に伸びる時期には指数が見た目より速く動く。その差自体が正常だ。腱が筋力に遅れて追いつく問題は腱は筋力より遅れて追いつくに別にある。

この研究は自然発症高血圧ラット10匹(対照群4、訓練群6)を対象とした実験モデルの検証研究である。ヒトのトレーニングプログラムを比較したものではなく、79.5%という数値もヒトが期待できる伸び幅ではない。

よくある質問

この研究で筋力はどれだけ伸びたのか?

10週間のはしご登り抵抗トレーニング後、訓練群が担いだ相対最大負荷が79.5%増加した(p = 0.0007)。これはラットを対象とした数値であり、ヒトのトレーニングで期待できる伸び幅ではない。

筋力が伸びれば筋も一緒に大きくなるのか?

同じ速度では大きくならない。この実験では相対最大負荷が79.5%伸びるあいだに、相対筋量が有意に増えた筋は長母趾屈筋だけで(p = 0.002)、同時に測定したヒラメ筋には変化がなかった。

なぜヒラメ筋は大きくならなかったのか?

ヒラメ筋は姿勢保持に使われる遅筋優位の筋で、すでに低い強度の刺激を継続的に受けている。はしご登りのように重い負荷を短く反復するトレーニングには、速筋の比率が高い長母趾屈筋が先に反応するという解釈が自然だ。

遺伝子発現に差がなかったなら、訓練効果がなかったということか?

違う。筋力は79.5%伸び、一つの筋の相対重量も増えた。遺伝子発現は運動直後の数日で大きく動いてから落ち着くため、10週間のプログラム終了後に一度測ると差が捉えられないことがある。各群が4匹と6匹という標本規模も影響する。

なぜ尾に錘を吊るす従来方式を変えたのか?

ラットの尾は血流が通る部位なので、錘を吊るすと循環に干渉が生じうる。研究陣は滑車と荷重ベストを組み合わせ、尾に触れずに漸進的過負荷をかけるモデルを作り、この10週間のプロトコルでそのモデルが働くことを確認した。

出典: PubMed

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