筋力の基準は世界記録の%ではなく実際の分布から作るべきだ
要点
筋力の基準線を世界記録の何パーセントで決めると、実際の選手の分布から外れる。2013〜2025年のパラパワーリフティング競技記録男子6,064件・女子3,187件を分析したところ、世界記録の25〜55%を根拠に作られた現行のメダル最低基準が、全階級・年齢カテゴリーの41%で実際の成績の1パーセンタイルに相当していた。実成績の50パーセンタイルを起点に計算し直すと、基準は男子で平均51kg、女子で平均29kg上がる。
研究陣はWorld Para Powerliftingのデータベースと公開データセットopenpowerlifting.orgから、15歳以上の選手の2013年から2025年までの競技記録を集めた。男子6,064件、女子3,187件である。これを大会レベル別(国内・地域・国際)に分け、国際はさらにワールドカップ・世界選手権・パラリンピックに区分した。年齢カテゴリーはルーキー(15〜17歳)、ネクストジェン(18〜20歳)、レジェンド(45歳以上)である。
何が間違っていたのか
既存のメダル最低基準は世界記録の25〜55%という形で作られていた。年齢カテゴリーと大会レベルに応じて割合だけを調整する構造だ。問題は、世界記録が分布の端にある一点にすぎないことである。その一点から割合で下ろした値が実際に選手が挙げる重量と合う理由はない。実際、全カテゴリーの41%で現行基準は実成績の1パーセンタイル、つまりほぼ全参加者がすでに超えている値だった。誰も除外しない基準は基準ではない。
代案は中央値を起点にすること
提案された方式は、各階級の50パーセンタイル、すなわち実成績の中央値を起点にすることだ。計算し直すと最低基準は男子で平均51kg、女子で平均29kg上がる。併せて示された規準値は相対筋力を基準に、年齢・性別・大会レベルごとの十分位で整理されている。規準筋力はパラリンピック > 世界選手権 > ワールドカップ > 地域大会 > 国内大会の順に高かった — 大会レベルがそのまま筋力分布の層になっているということである。
ヘルチャン指数の等級がパーセンタイルで定義される理由
この論文が指摘した失敗は、筋力基準を作るあらゆる場所で繰り返される。どんな絶対値 — 世界記録であれ体重2倍のスクワットであれ — を固定基準にしても、実際の分布がその横へ移動すれば基準だけが取り残される。fairliftがアンランク・ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・ダイヤの等級を絶対スコアではなく実ユーザーのパーセンタイルで定義し、閾値を定期的に再計算する理由がこれだ。自分の位置を実際の分布の上で確認するにはヘルチャン指数計算機にビッグ3の記録を入れてみればよい。別の指標をパーセンタイルで読む例はVO2maxスコアのベンチマークにもある。
これらの値はパラパワーリフティングの競技選手の大会記録から得られたメダル資格基準と規準値である。一般のジムのリフターの目標値としてそのまま転用できる数字ではなく、移せるのは基準の作り方のほうだ。
よくある質問
パラパワーリフティングの現行メダル最低基準はどう決められているか?
世界記録の一定割合として決められている。年齢カテゴリーと大会レベルに応じて、世界記録の25%から55%のあいだの値が最低基準として使われている。
その基準の問題は何か?
実際の競技成績の分布から外れている点だ。2013〜2025年の記録9,251件を分析した結果、全階級・年齢カテゴリーの41%で現行の最低基準が実成績の1パーセンタイルに相当していた。ほぼ全参加者がすでに超えている値であり、選別として機能していない。
新しく提案された基準はどれだけ高くなるのか?
各階級の実成績の50パーセンタイルを起点にすると、最低基準は男子で平均51kg、女子で平均29kg高くなる。
大会レベルによって筋力の分布は違うのか?
違う。規準筋力はパラリンピック出場選手で最も高く、世界選手権、ワールドカップ、地域大会、国内大会の順に低くなった。規準値は年齢・性別・大会レベルごとの十分位で示されている。
筋力の等級を絶対スコアではなくパーセンタイルで定義する利点は?
ユーザーの分布が動いても等級が意味を持ち続けることだ。固定された絶対基準はやがて誰も除外しないか、逆に誰も超えられない値になるが、パーセンタイル基準は再計算のたびに現在の分布を反映する。
出典: PubMed