高タンパク食は腸内細菌の豊富度を下げた — 運動では戻らなかった
要点
マウス24匹を通常食・高タンパク食・通常食+運動・高タンパク食+運動の4群に分け8週間観察した結果、高タンパク食単独で腸内細菌の豊富度が低下し、レジスタンストレーニングを併用しても豊富度と群集構成は高タンパク食単独群と有意差がなかった。一方で高タンパク食+運動群は通常食群と比べてパフォーマンスが向上し、腸間膜脂肪量と脂肪細胞サイズが減少した(p<0.05)。著者らはタンパク質が生理・微生物適応の主要な決定要因であり、レジスタンストレーニングは主にパフォーマンスを高め一部の菌属にのみ影響すると結論づけている。ただしエネルギーの60%をタンパク質にしたマウス実験だ。
タンパク質を増やせば筋肉に良い、という話は十分聞いてきたはずだ。この研究が投げかけるのは別の問いだ。タンパク質を限界まで上げたとき腸では何が起き、運動はそれを相殺してくれるのか。
設計は単純だ。雄のC57BL/6マウス24匹を1群6匹で4群に分けた。通常食(NC)、高タンパク食(HPD)、通常食+運動(NC+EX)、高タンパク食+運動(HPD+EX)。高タンパク食は総エネルギーの60%をタンパク質で供給した。レジスタンストレーニングは漸進的なはしご登りを週3回、8週間行い、握力・重量保持能力・ロータロッド・機能的筋力でパフォーマンスを測定した。腸内細菌叢は16S rRNAシーケンシングで解析した。
タンパク質と運動は同じ仕事をしたのか
分かれた。パフォーマンスで勝ったのは高タンパク食+運動群だ。通常食群に比べてパフォーマンスが有意に向上し、腸間膜脂肪量と脂肪細胞サイズも減少した(p<0.05)。ここまでは想定どおりだ。
ところが微生物側では運動がほとんど何も戻さなかった。高タンパク食単独で腸内細菌の豊富度が下がったが、運動を加えた群は豊富度でも群集構成全体でも高タンパク食単独群と有意差がなかった。ただしLEfSe解析ではLactobacillusとFaecalibaculumといった特定の菌属の相対存在比が高タンパク食+運動群で高かった。
群集全体と特定の菌属は別の話だ
この区別がこの研究の核心だ。運動は群集全体を回復も安定化もさせなかった。代わりにいくつかの菌属の比率を押し上げた。多様性の指標が戻らないまま特定の菌が増えたということは、運動が腸内環境を元に戻すのではなく別の方向へもう一度押しやっているという意味に近い。
この実験はマウスを対象とし、エネルギーの60%をタンパク質で満たしている。体重1kgあたり2g前後を摂る一般的なリフターのタンパク質比率は総エネルギーの25〜35%程度だ。つまりこれは普通の高タンパク食ではなく天井を試した条件だ。持ち帰るべきは数値ではなく方向だ。
リフターにとっての意味
タンパク質を上げるほど良くなる指標と、上げるほど悪くなりうる指標が別々の帳簿に記録されるということだ。パフォーマンスと体組成は良くなり、微生物の多様性は下がった。両者は同じ方向を指していないので、片方だけを見てタンパク質比率を上げ続ける根拠にはならない。
実用的にはタンパク質を増やすときに食物繊維と食品の多様性も一緒に増やすほうが安全だ。目標量を満たそうとしてプロテインパウダーと鶏むね肉だけが残れば、増えたのはタンパク質で、消えたのは植物性食品の種類だ。リフターの食物繊維で扱ったのがまさにこの問題だ。
筋力スコアとの関係
この研究で運動が確実に変えたのはパフォーマンスだった。相対筋力スコアが測っているのもまさにそれだ。スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの合計は腸内群集の変化を知らないが、その変化が実際に力になったかどうかは正確に知っている。タンパク質比率を変えたなら、3か月後のビッグ3合計がその実験の結果だ。
どれだけ摂るべきかは食事法の名前よりタンパク質の目標量とホエイ30gで現れる頭打ちで扱った。
よくある質問
高タンパク食は腸に悪いということか?
この研究だけでそう断定はできない。エネルギーの60%をタンパク質にしたマウスで腸内細菌の豊富度が下がったのは事実だが、豊富度の低下がそのまま健康の悪化を意味するかはこの実験が答えていない。
運動をすれば高タンパク食の影響は相殺されるか?
この研究では相殺されなかった。レジスタンストレーニングを併用した群は豊富度でも群集構成でも高タンパク食単独群と有意差がなかった。ただしLactobacillusやFaecalibaculumなど一部の菌属の比率は高かった。
では運動は何を変えたのか?
パフォーマンスと体組成だ。高タンパク食+運動群は通常食群と比べてパフォーマンスが有意に向上し、腸間膜脂肪量と脂肪細胞サイズが減少した(p<0.05)。
ヒトにそのまま当てはまるか?
当てはまらない。マウス24匹を8週間観察した動物実験であり、タンパク質比率も一般的なリフターの食事よりはるかに高い。概念的な示唆だけを持ち帰れる。
タンパク質を増やすとき何を一緒に確保すべきか?
食物繊維と植物性食品の多様性だ。目標量だけを追うと野菜・全粒穀物・豆類が食卓から押し出されやすいが、腸内細菌が食べているのは主にそちらだ。
出典: PubMed