軽い重量を速く挙げて伸びるのは速度ではなく力である
要点
中高年・高齢の成人36名が1RMの40〜60%をできるだけ速く押すトレーニングを週2回、12週間行った。理論的最大筋力、最大パワー、力–速度の傾きはいずれも有意に上昇し(p < 0.001)、最大速度は集団平均で変化しなかった。速く挙げるトレーニングがパワーを上げた経路は、速度ではなく力だったということだ。速度が上がったのは開始時点で最も遅かった3分の1で、この集団だけが10.6%上昇した(残りは-1.0%)。
パワーは力と速度の積だ。だからパワーを上げるにはどちらかを上げる必要があるが、軽い重量を速く挙げるトレーニングは速度側を狙うものと考えられがちである。この研究はその前提を直接検証した。
参加者は歩行制限のある人とない人を混ぜた中高年・高齢の成人36名(平均61±13歳)。12週間、週2回、1RMの40〜60%でレッグプレスをできるだけ速く押した。前後で1RMの30〜90%の各重量に対する速度を測り、個人別の力–速度プロフィールを描いた。
何が上がったのか
理論的最大筋力、最大パワー、力–速度の傾きがいずれも有意に上昇した(p < 0.001)。ところが理論的最大速度は集団平均で変わらなかった。パワーが上がったのは事実だが、その上昇分はほぼすべて力の軸から出ている。軽く速く挙げたのに、体が返した答えは「より強く」だった。
速度が上がったのは誰か
平均の裏に大きな個人差があった。開始時点の最大速度が低いほど速度の向上が大きかった(r=-0.629、p < 0.001)。最大速度で3等分すると、最も遅かった3分の1は速度が10.6%上がり、残りは-1.0%で実質横ばいだった。さらにこの遅かった集団では、速度の向上が最大歩行速度の向上と連動していた(r=0.685、p=0.010)。
すでに速い人には無意味なのか
無意味なのではなく別のところに行く。同じトレーニングで、すでに速度が十分な人でも最大筋力と最大パワーは上がった。不足している軸が先に埋まり、その軸が埋まっていれば残りの軸が伸びるということだ。処方はプログラム名ではなく自分のプロフィールから出てくる。
ビッグ3をやる人になぜ関係するのか
スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの1RMは力の軸の指標だ。40〜60%を速く押すトレーニングが最大筋力を上げたという結果は、軽い重量でも1RMに寄与する適応が起きることを意味する。毎セッション重く挙げ続ける必要はないという根拠になり、関節がきつい週に置き換えるカードが一枚増える。バー速度からその日の強度を読む方法はバー速度が教えるパーセントで扱った。
参加者36名は平均61歳で、一部に歩行制限があった。若くトレーニング歴のあるリフターに向上幅がそのまま当てはまるとは言えない。ただし「不足する軸が先に伸びる」という個別化の原則は、年齢を問わず繰り返し報告されているパターンだ。
よくある質問
軽い重量を速く挙げると最大筋力も上がるのか?
この研究では上がった。1RMの40〜60%で週2回・12週間トレーニングした結果、理論的最大筋力と最大パワーが有意に上昇した(p < 0.001)。一方で最大速度は集団平均で変わらず、パワー上昇のほとんどは力の軸から出たと解釈される。
速度トレーニングは誰に最も効くのか?
開始時点で最も速度が遅い人だ。最大速度の下位3分の1は速度が10.6%向上した一方、残りは-1.0%で変化がなく、低い初期速度と大きな向上の相関はr=-0.629だった。
パワートレーニングの適正重量はどれくらいか?
この研究が用いた範囲は1RMの40〜60%で、週2回・12週間で最大筋力と最大パワーの両方が上がった。重要なのは重量そのものより、その重量をできるだけ速く押し出す意図である。
パワーが伸びると日常動作も良くなるのか?
速度が実際に上がった集団ではそうだった。初期速度が低かった下位3分の1で、速度の向上と最大歩行速度の向上が連動した(r=0.685、p=0.010)。速度が変わらなかった集団ではこの結びつきは見られなかった。
出典: PubMed