回復

飲酒は体重1kgあたり1gから筋力を24〜60時間落とす

要点

2023年のナラティブレビューによれば、体重1kgあたり約1gのアルコールはトレーニング後24〜60時間にわたって一貫して筋力を低下させ、約0.5gの水準では明確な影響が出なかった。垂直跳びのような爆発的パフォーマンスに有意差はなかったが、アルコールは筋タンパク質合成を開始させる mTORC1 のリン酸化を有意に減少させる。健康面では、30万人超を解析した UK Biobank 研究で少量飲酒の心血管保護効果が生活習慣の補正後に消えた。

「少し飲むほうがむしろ心臓に良い」という話は、観察研究のJ字カーブに支えられて数十年生き延びてきた。30万人超を対象に非線形メンデルランダム化を適用した UK Biobank の解析は、そのカーブを消した。喫煙、BMI、身体活動、野菜摂取、赤身肉摂取、主観的健康度といった生活習慣要因を補正しただけで、少量飲酒の心血管保護効果は消えた

残った絵は単純だ。あらゆる飲酒量が心血管リスクの上昇と関連し、少量では上昇幅が小さかったが、量が増えるほど高血圧と冠動脈疾患のリスクは指数的に大きくなった。遺伝データでも、アルコール摂取は血圧、LDL コレステロール、そしてアルコール性の肝負担の指標であるγ-GTP を用量依存的・非線形に押し上げた。

どれくらいからトレーニングに響くのか

ここでは用量がすべてだ。2023年のナラティブレビューによれば、体重1kgあたり約1gの高用量アルコールはトレーニング後24〜60時間にわたって一貫して筋力を低下させた。一方、体重1kgあたり約0.5gの低用量では明確な影響は確認されなかった。

感覚をつかむために換算してみる。純アルコール20gを1単位とすると、ビール500ml 1本がおよそ1単位、日本酒1合が約1単位だ。体重70kgの人にとって1g/kgは70g、つまり3.5単位ほど、0.5g/kgは35gで2単位弱になる。研究が言う「高用量」は、飲み会1回で十分に超える量だ。

パワーと筋成長には

垂直跳びのような爆発的パフォーマンスでは、アルコール群とプラセボ群の間に意味のある差が出なかった研究がある。ただしこれらは短期研究であり、長期的な筋力・パワーの適応への影響を見たものではない点は押さえておきたい。

筋成長側のシグナルはもっと明確だ。アルコールは筋タンパク質合成を開始させるmTORC1 のリン酸化を有意に減少させる。トレーニング直後の1杯がその日の成長を丸ごと消すわけではないが、頻繁または大量の飲酒は回復と同化シグナルの両方で損になる。

結局、飲んでいいのか

正直な結論はこうだ。たまに飲む酒が筋成長や心臓を壊すことはない。しかし頻繁または大量の飲酒は健康と成長の両方で差し引きマイナスになる可能性が高く、「少しならむしろ良い」という免罪符はデータにない。飲むなら強度の低い日に置き、その後48時間は最大筋力のセッションを入れないのが合理的だ。

筋力低下が24〜60時間続くという点はトレーニング配置にそのまま使える。金曜に飲み会があるなら、土曜朝の1RMテストや重いデッドリフトのセッションは避け、ボリューム中心の日か休養日に回すほうがいい。

筋力スコアとの関係

ビッグ3を定期的に測っていれば、飲んだ翌日の数字だけが妙に低いのを見たことがあるはずだ。それは漠然とした体調の問題というより、文献が繰り返し観察している24〜60時間の筋力低下である可能性が高い。この時期に測った記録を1RMとして保存すると、筋力スコアが実力より低いまま残る。飲んだ翌日は記録を更新する日ではなく回復する日に割り当てたほうが、データも体もきれいになる。

回復が記録にどれだけ効くかは睡眠不足とリフティングのパフォーマンスでも扱った。

よくある質問

酒を飲むと筋肉の成長は止まるのか?

止まりはしない。ただしアルコールは筋タンパク質合成を開始させる mTORC1 のリン酸化を有意に減少させるため、頻繁または大量の飲酒は回復と同化シグナルの両方で損になる。たまに飲む程度で成長が消えることはない。

どのくらいの量から筋力に影響するのか?

2023年のナラティブレビューでは、体重1kgあたり約1gのアルコールがトレーニング後24〜60時間にわたって一貫して筋力を低下させた。体重1kgあたり約0.5gでは明確な影響が確認されなかった。体重70kgなら1g/kgは純アルコール70g、およそ3.5単位にあたる。

適量の飲酒は心臓に良いのか?

良くない。30万人超を対象とした UK Biobank の非線形メンデルランダム化解析では、喫煙・BMI・身体活動などの生活習慣要因を補正すると少量飲酒の心血管保護効果は消えた。あらゆる飲酒量がリスク上昇と関連していた。

飲んだ翌日にトレーニングしてよいか?

軽いトレーニングは問題ないが、最大筋力のセッションは避けたほうがよい。高用量の飲酒後の筋力低下は24〜60時間続くと報告されているため、1RMテストや重いセッションは2日後に回すのが合理的だ。

出典: Stronger by Science

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