研究

インスリン抵抗性は太ったからではなく、脂肪組織の酸素不足から始まる

要点

脂肪組織が大きくなるとき、血管の新生がその速さに追いつかないと組織は低酸素に陥り、その低酸素が慢性炎症と脂肪細胞の機能異常の出発点になる。この研究ではIL-19遺伝子を欠損させたマウスが、痩せたまま通常の餌を食べていたにもかかわらず、脂肪組織の血管が減り、低酸素・線維化・炎症・脂肪細胞の肥大が生じ、耐糖能異常とインスリン抵抗性まで現れた。逆に肥満した野生型マウスにIL-19を投与すると、血管新生が改善し炎症と耐糖能異常が軽減した。引き金は脂肪の総量ではなく、脂肪組織が血液供給を追い越して大きくなった状態だった。

順序を整理するとこうなる。内臓脂肪が増える → 血管がその速さに追いつかない → 組織が低酸素に陥る → 低酸素が炎症を点ける。この炎症はもともと新しい血管をつくれという合図に見えるが、肥満では血管は十分に増えず、慢性の低強度炎症と脂肪細胞の機能異常だけが残る。その先にインスリン抵抗性を含む代謝・心血管の合併症が来る。つまり問題は脂肪があることではなく、脂肪が供給網より速く大きくなったことだ。

なぜ痩せたマウスがインスリン抵抗性になったのか?

これがこの研究の中心的な観察だ。研究チームは白色脂肪組織にも発現するインターロイキンIL-19を遺伝子レベルで欠損させた。すると痩せたまま通常の餌だけを食べたマウスで、脂肪組織の血管がはっきり減り、低酸素・線維化・炎症・脂肪細胞の肥大が同時に現れ、耐糖能異常とインスリン抵抗性が生じた。太っていないのに代謝が崩れたわけだ。反対側では、高脂肪食で肥満した野生型マウスが同じパターン — 血管の減少、脂肪組織の炎症、耐糖能異常、インスリン抵抗性 — を示した。異なる経路から同じ地点に到達している。

向きを戻すことはできたのか?

  • 組換えIL-19の投与 — 肥満した野生型マウスで血管新生が改善し、脂肪組織の炎症が減り、耐糖能異常が軽減した。
  • 培養脂肪細胞 — ヒトの脂肪細胞を含め、IL-19がブドウ糖の取り込みを増やした。
  • 経路 — その効果はIRS2とGLUT-4の発現・機能の増加につながった。インスリンシグナルとブドウ糖輸送の王道の経路だ。

著者らが掲げた言い方は炎症と血管新生を切り離すというものだ。これまで脂肪組織の炎症を消そうとする試みは、血管ができる合図まで一緒に消してしまっていたが、抗炎症性のインターロイキンを使えば血管は増やしつつ炎症は減らす組み合わせが成り立つという主張である。ただしここまではマウスと培養細胞の話だ。人にIL-19を投与した結果ではない。

リフターにとって何の意味があるのか?

薬ではなく構造を見ればいい。問題の本質が脂肪組織が血液供給を追い越して大きくなることなら、方向は二つしかない — 大きくなる速さを抑えるか、供給を増やすかだ。バルクで脂肪が付く速さを管理するのが一つ目(増やすときの比率)、トレーニングで毛細血管密度と血管機能を上げるのが二つ目(レジスタンストレーニングと血管の健康リフターのゾーン2)。体重計だけではこの構造は見えない — 同じ体重でも脂肪細胞が支えの限界を越えているかは別の問題であり、関節の痛みも重さより先に炎症に乗る

マウスと培養細胞を対象とした研究だ。IL-19は人に使う治療薬ではなく、ここで確認されたのは治療法ではなく機序の仮説である。

よくある質問

脂肪が増えるとなぜインスリン抵抗性になるのか?

脂肪組織が大きくなる速さに血管新生が追いつかず組織が低酸素に陥り、その低酸素が慢性炎症と脂肪細胞の機能異常を引き起こすからだ。この研究はその連鎖の出発点を血液供給の不足に置いている。

痩せている人でもインスリン抵抗性になるのか?

この研究では、IL-19を欠損させたマウスが痩せたまま通常の餌だけで、脂肪組織の血管減少・低酸素・炎症とともに耐糖能異常とインスリン抵抗性を生じた。体重ではなく脂肪組織の状態が問題だということだが、人で確認された結論ではない。

IL-19とは何か?

抗炎症系のインターロイキンで、この研究で白色脂肪組織にも発現することが示された。脂肪組織の血管新生を保ちながら炎症を抑える保護的なアディポカインとして提示されている。

運動はこの経路に影響するのか?

この研究は運動を試していない。ただし問題の軸が血液供給である以上、毛細血管密度と血管機能を高めるトレーニングは同じ軸の上にある。この論文がその効果を証明したわけではない。

IL-19を人の治療に使えるのか?

まだ使えない。マウスと培養細胞のレベルの結果であり、人を対象とした臨床的な根拠はない。

出典: PubMed

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