研究

ベンチプレスの記録は腕の長さより胸の厚さがはるかに大きく左右する

要点

パラリンピックパワーリフティング選手26名をパノラマ超音波で測定した研究で、大胸筋の厚さがベンチプレスの最大筋力と最も強く関連する構造変数だった。大胸筋の厚さが1cm増えるごとにパフォーマンスは約56%増加すると推定され(p=0.008)、上腕三頭筋の厚さ1cmは約34%の増加(p=0.001)、腕の長さ1cmの増加は約4%の低下(p=0.033)と関連した。腕が長い不利は実在するが、筋の厚さで相殺できる大きさである。

ベンチプレスが伸びない理由として最もよく挙げられるのは腕の長さだ。腕が長ければバーの移動距離が長くなるから不利だ、という理屈である。この研究はその不利が実際どれくらいなのかを、筋の構造と並べて測った。

対象はパラリンピックパワーリフティング選手26名。パノラマ超音波で大胸筋と上腕三頭筋の部位別構造を測定し、それらの値が最大動的筋力とどれだけ関連するかを一般化線形モデルで分析した。

何をどこで測ったのか?

測定点は具体的だ。大胸筋は鎖骨長の15%と30%の地点で横断面積と筋厚を、上腕三頭筋は上腕骨長の50%、60%、70%の地点で横断面積と筋厚を測った。上腕三頭筋は60%地点で羽状角と筋束長も併せて測定している。

「胸が大きければベンチが強い」ではなく、胸のどの地点が厚いことが重要なのかを問う設計である。

最も大きく関連した変数は何か?

鎖骨長30%地点の大胸筋の厚さが最大動的筋力と正の関連を示した(係数0.2023、p=0.008)。この地点の筋厚が1cm増えるごとにパフォーマンスは約56%増加すると推定された。

上腕骨60%地点の上腕三頭筋の厚さも有意な正の関連を示した(係数0.290、p=0.001)。こちらは1cmあたり約34%の増加だ。著者らの結論は明確だった — 測定した変数のうち大胸筋の厚さがパフォーマンスとの関連の大きさで最大だった。

腕の長さはどれくらい不利なのか?

腕の長さはパフォーマンスと負の関連を示した(係数-0.039、p=0.033)。大きさは1cm長くなるごとに約4%の低下だ。不利が実在するという意味であり、同時に同じ1cmで見れば大胸筋の厚さの影響が十倍以上大きいという意味でもある。

実践的な読み方は単純だ。腕の長さは変えられず筋厚は変えられるのに、変えられる側の係数のほうがはるかに大きい。腕が長いからベンチが伸びないという説明は事実の一部だが、結論にするには小さすぎる。

この研究の対象はパラリンピックパワーリフティングの選手だ。この競技のベンチプレスは上肢のみで行われ、レッグドライブとアーチを使う一般のパワーリフティングとは力学が異なる。また26名の横断研究であるため関連であって因果ではない。「1cmあたり56%」はこの標本から得られたモデル推定値であり、胸を1cm厚くすれば記録が56%上がるという約束ではない。

トレーニングにはどう反映するか?

最も直接的な用途はベンチが停滞したときにどこから育てるかの順序だ。このデータで関連が大きい順は大胸筋の厚さ → 上腕三頭筋の厚さで、しかも大胸筋は鎖骨30%地点、三頭筋は上腕骨60%地点という具体的な位置が付いている。

つまり補助種目を選ぶとき胸のボリュームを先に確保し、三頭を後から足す順序はこのデータと矛盾しない。上部胸を狙う角度の選択はインクラインダンベルプレスと上部胸にまとめてある。

そして筋の大きさと筋力の関係自体が単純な比例ではない点も併せて見るべきだ — その問題は筋の大きさと筋力の相関にある。

マッスルインデックスではどんな意味を持つか?

マッスルインデックスはスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの1RMを合計し、体重・性別・年齢・身長で補正する。つまりベンチの1RMは合計の3分の1を占める項目であり、3種目のうち停滞が最も長引く種目でもある。

この研究が与える実用的なメッセージは骨格条件のせいだと結論する前に筋の厚さを先に見ろということだ。マッスルインデックスは腕の長さを補正しないが身長は補正する — 170cmを超えた分だけ係数が付く。自分のビッグ3合計が今どこにあるかはマッスルインデックス計算機で確認できる。

よくある質問

ベンチプレスの記録に最も大きく関連する身体構造は?

この研究では大胸筋の厚さだった。鎖骨長30%の地点で測った大胸筋の厚さが最大動的筋力と最も強い正の関連を示し、1cm増加あたり約56%のパフォーマンス増加と関連した(p=0.008)。

腕が長いとベンチプレスにどれくらい不利なのか?

パラリンピックパワーリフティング選手26名を対象としたこの研究で、腕の長さはパフォーマンスと負の関連を示し、1cm長くなるごとに約4%の低下と関連した(p=0.033)。不利は実在するが、大胸筋の厚さ1cmの影響(約56%)に比べればはるかに小さい。

上腕三頭筋の厚さはベンチプレスにどれくらい寄与するのか?

上腕骨長60%の地点で測った上腕三頭筋の厚さが有意な正の関連を示し、1cm増加あたり約34%のパフォーマンス増加と関連した(p=0.001)。大胸筋の厚さに次いで大きい関連である。

この結果を一般のパワーリフティングにそのまま適用できるか?

注意が必要だ。対象はパラリンピックパワーリフティング選手26名であり、この競技のベンチプレスは上肢のみで行われるためレッグドライブとアーチを使う一般のベンチプレスとは力学が異なる。また横断研究であるため関連を示すだけで因果を証明しない。

ベンチプレスが停滞したらどこから育てるべきか?

このデータでの関連の大きさの順序は大胸筋の厚さが先、上腕三頭筋の厚さが次だった。したがって補助種目で胸のボリュームを先に確保し三頭を後から足す順序は、この結果と矛盾しない。

出典: PubMed

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