心電図AIが閉塞性心筋梗塞を2倍以上拾った — それでも半分は取り逃した
要点
スウェーデンの救急外来の胸痛患者24,511人(平均59歳、男性52%)のうち、467人(1.9%)が閉塞性心筋梗塞だった。心電図AIモデルの感度は52%で、従来のSTEMI基準の23%の2倍以上、特異度は99%対98%でほぼ同等、陽性的中率は51%対17%と大きく開いた。ただし感度52%とは、実際に閉塞している患者の半分近くを依然として取り逃すという意味だ。心電図がきれいだということは、心筋梗塞ではないという意味にはならない。
まず用語を整理する。救急外来で長く使われてきたSTEMI基準は、心電図のST部分が決められた分だけ上がっているかを見る。問題は、冠動脈が実際に詰まっているのにその基準を満たさないケースが少なくないことだ。そこで出てきたのが、基準を満たすかどうかではなく閉塞そのものを狙う閉塞性心筋梗塞(OMI)という概念である。この研究は2017〜2018年のスウェーデンの救急外来データで、血管造影と専門家の判定によって閉塞の有無を確定させたうえで、同じ心電図を複数の判読方法にかけて成績を比べた。
数字はどう分かれたのか?
- AIモデル — 感度52%(47〜57)、特異度99%、陽性的中率51%、陰性的中率99%。
- 従来のSTEMI基準 — 感度23%(19〜27)、特異度98%、陽性的中率17%、陰性的中率98%。
- グラスゴー自動判読アルゴリズム — 感度32%、特異度98%、陽性的中率26%。
- 拡張基準(追加誘導、左脚ブロック用の修正Sgarbossa、左室肥大用の基準を含む) — 感度は41%に上がったが、特異度は95%、陽性的中率は14%まで下がった。
もっとも実用的な差は陽性的中率51%対17%だ。従来の基準では陽性が出ても5人に4人以上が空振りだったのに対し、AIの陽性は半分が本当の閉塞だった。拡張基準の結果はその裏返しの教訓になる — 基準を緩めて感度を上げれば、偽陽性も一緒に増える。特異度3ポイントの低下は、この規模の救急外来では数百件の不要な対応に翻訳される。
リフターにとって何を意味するのか?
二つある。第一に、心電図が正常であることは除外にならない。この研究で最良の判読方法ですら閉塞の半分近くを取り逃した。トレーニング中や直後の胸痛を「心電図は問題ないと言われた」で終わらせてはいけない理由だ。第二に、心電図は心筋が厚い人でとくにぶれる。今回の拡張基準に左室肥大用の別の判定基準(V1〜V3のST上昇がR波・S波の0.25以上)がわざわざ入っていること自体がその難しさを示している。心電図が左室肥大を見落とす割合とその所見の予測力は別に扱ったが、今回の結果は同じ限界が急性の場面でも繰り返されるということだ。
運動中の胸痛、失神、いつもと違う息苦しさは緊急事態でありうる。様子を見ずにすぐ受診すべきであり、心電図が正常でも心筋梗塞は否定できないというのがこの研究の要点だ。
よくある質問
閉塞性心筋梗塞(OMI)はSTEMIとどう違うのか?
STEMIは心電図のST上昇が決められた基準を超えるかで定義され、OMIは冠動脈が実際に閉塞しているかで定義される。閉塞があってもST上昇の基準を満たさない患者がいるため、二つの定義は分かれる。
AI心電図モデルの成績はどうだったのか?
胸痛患者24,511人のうち467人が閉塞性心筋梗塞で、AIモデルの感度は52%、特異度は99%、陽性的中率は51%だった。同じデータで従来のSTEMI基準は感度23%、陽性的中率17%だった。
感度52%で十分なのか?
十分ではない。実際に閉塞している患者の半分近くを取り逃すという意味であり、心電図の結果だけで心筋梗塞を除外することはできない。症状や血液検査など他の根拠が必要になる。
基準を緩めればもっと拾えるのではないか?
拾える分だけ偽陽性も増える。この研究では拡張基準が感度を41%に上げた一方で、特異度は95%、陽性的中率は14%まで下がった。
心臓が大きい人は判読が難しいのか?
左室肥大があると波形が変わり、判読はぶれやすくなる。この研究の拡張基準にも、左室肥大のための専用の判定基準が含まれていた。
出典: PubMed